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​羽野 幸春

1946年4月15日福岡県朝倉市生まれ。

九州大学にて哲学を学んだ後、上京。東京都立高等学校の倫理社会科教諭として町田高校、神代高校、駒場高校、日比谷高校を歴任。

東西の神話や哲学思想に精通し、高校倫理科目の副教材「詳解倫理資料」を編纂。晩年は日比谷高校資料館の収蔵品管理に力を尽くした。

2017年3月惜しまれつつ逝去。

はじめに

 その物静かな印象は、少し近寄りがたくもありました。一度も話したことがないという生徒のほうが多かったかもしれません。
 それでも多くの生徒に強烈な印象を残しているのは、先生が「授業」というかたちで、また時に自身を語ることによって、生徒とある種の個別的な関係を
結ぶことができたからでした。チョークを片手に、時に朴訥として、時に身振り手振りを交えながら語るその姿は、少年のようにも、哲学者のようにも見え、常に受講する生徒を引き込みました。

 自身の科目が生徒自身の生と地続きであることを示し続けた、その希有な達成の背景には、静かでやさしい色合いの人柄と終生積み重ねた努力による精緻な知見の他に、青年期に避けて通ることのできない惨めな失敗と躓きの苦しさの実感を、絶えず持ち続けた姿勢があるように思えます。

 倫理という科目を通じて、われわれの生きる世界が投げかける様々な問いを示すことに努められた先生の教えは、今も多くの生徒の中で生き続けています。

(→本サイトについて)

2019 by A Student / Special Thanks M.Hano